こんにちは。
ライターの伊藤です。
ゆにわマートでは、先日、和ろうそくの専門メーカー、大與(だいよ)さんを訪問させていただきました。
和ろうそくとは、1本1本が昔ながらの手作りによって生み出される、日本に古くから伝わる製法でつくられたろうそくのこと。
その炎はきれいなオレンジ色で、風が吹いていなくても微細に揺らめいて、とても幻想的です。
ゆにわマートでは、「お米のろうそく」を取り扱っています。
わたしもかれこれ3年ほど愛用していますが、今回、ろうそく作りの現場でお話を聞いて、その、幻想的な灯りがより味わい深いものとなりました。
そこで、大與さんを訪問して伺ったお話や、数日後、ゆにわマートメンバーとのシェア会で体感したことを、ぜひ紹介させてください。
▼ゆにわマートのスタッフは6名で訪問。
左から2番目の男性が大與の社長・大西さんです。
和ろうそくとは?
その昔、照明として人びとの暮らしに寄り添っていた、和ろうそくの灯り。
はじまりは室町時代ともいわれ、江戸時代から明治時代にかけて一気に広まりました。
ですが、電気の時代になってろうそくの需要が減り、現在、和ろうそくの職人さんは、日本全国で10人もいないとか。
そんななか、今回訪問した大與(だいよ)さんは、1914年(大正4年)に創業。
琵琶湖に近い、滋賀県高島市で四代にわたって技術を継承しています。
▼琵琶湖周辺の風景。
ゆにわマートがある大阪のくずはから、車で約2時間、
琵琶湖を眺めながら車を走らせると、静かな郊外の一角にその工場はありました。
工場には店舗も併設しています。
まずは和ろうそくの特徴や、西洋のろうそくとの違いについて、教えていただきました。
和ろうそくの種類
大與さんは、2種類の原料からろうそくを作っています。
ひとつめは、ハゼ(櫨)のろうそく。
ハゼの実から抽出したロウを使う、日本古来のろうそくです。
完成品は、ほんのり緑色。
▼こちらがハゼの実です。
ハゼの木はウルシ科の植物で、触るとかぶれてしまいます。
ところが、枯れて実になる冬の間だけ、かぶれないんだとか。
そのタイミングで、実からロウを抽出するわけですから、
ろうそく作りって、自然の循環の一部なんだな・・
その恵みを、わたしたち人間は受け取っているんだな・・
と感じられて、ちょっと感慨深かったです。
そしてもうひとつ、大與さんが作っているのは、米ぬかのろうそく。
お米から米油を絞ったあとの、〝ぬか〟から抽出したロウを使います。
粘りが少ない硬めのロウなので、ゆっくり燃えて長持ちするとか。
▼店舗のディスプレイ。大きなブロック型のキャンドルや、食卓にぴったりなテーパーキャンドルなども並んでいました。
▼こちらは、「無香料のティーキャンドルがほしい」というお客様のリクエストから生まれた、米ぬかろうそくのティーキャンドル。燃焼時間はなんと3時間!
このように、大與さんの和ろうそくは、すべて植物原料で作られています。
一方、一般的な西洋ろうそくは、石油系パラフィンを原料とするものが多く、黒い煙やススが出たり、匂いが鼻につくと感じる人も多いと思うのですが、
自然のものでつくられる和ろうそくは、ススも出ず、ロウが垂れたり、燃えたあとに嫌な匂いも残りません。
日本のろうそくは海外でも人気
そんな魅力もあって、最近では、「海外で和ろうそくの需要が高くなっています」と大西社長。
欧米では、食事やパーティーなど日常的にキャンドルを灯す文化があることや、オーガニック志向の人が少なくないことから、
100%植物性で住空間にもやさしい、和ろうそくが注目されている、ということでした。
「石油系のろうそくを使っていたときは、壁紙などに匂いやススが染みついてしまい、壁紙を張り替えたこともあったけれど、和ろうそくを使いはじめてからは、その必要がなくなった、とおっしゃるお客様もいます」
と大西社長。
▼海外でも人気のまめろうそくはギフトに買う人も多いそう。長さ4cmほどで、燃焼時間は約15分。瞑想時のタイマー代わりに使う人もいるとか。
ちなみに、なぜパッケージが猫のイラストなのか、想像がつきますか?
実は、植物性100%のロウは、ネズミの好物なんだそうです!
だから、昔のろうそく屋さんはみな店で猫を飼っていたとか。
それくらい、体に害がない、ということですね。
自然のものを食べると体が喜ぶのと一緒で、自然由来のろうそくというのも、人に優しい感じがして安心できるなあと思いました。
和ろうそくのロウが垂れない理由
ちなみに、ロウが垂れない理由についても、大西社長に現物を見せてもらいながら、教えていただきました。
その秘密は、〝芯〟にあります。
筒状にクルッと丸めた和紙に、トウシンソウ(灯心草)という、イグサ科の植物(表皮を剥いだ繊維)を巻きつけてあるのです。
ずいぶんと、しっかりした芯ですよね!
この芯ひとつひとつに、手作業でロウを塗っていくそうです。
(ものによっては型にいれます)
「ろうそくがきれいに燃えてゆくためには、芯の太さと溶けたロウのバランスが大切です。
だから、(熱によって)溶けたロウをしっかり吸えるだけの太さの芯を使います。
芯が細いとロウを吸いきれず、ロウが表面にたまって垂れてしまうので」
米ぬかろうそくの美しい炎は、このように、
手間ひまをかけた昔ながらの製法によると知り、有り難さでいっぱいになりました。
手仕事だからこそ、創り出せる灯り
店舗でお話をうかがった後は、工場も見学させていただきました。
現場には、大西社長と取締役を務める弟さん、ご年配の女性スタッフが4人。
ろうそくの型取りをしたり、色がけをしたり、完成したろうそくを和紙で1本ずつ包んでいたり。地道でていねいな手仕事に頭が下がりました。
▼1本ずつ季節の花が描かれたろうそくも。
弟さんは、手仕事のよさをこう語ります。
「機械は同じことを繰り返すのは得意だけど、その日の気温とか、微妙な変化を感じて調整しながらやっていくには、手作業がいちばんなのです」
ろうそくの表面にできた小さな穴など、細かい不備を人の目で確認する丁寧な仕事を見て、わたし自身、「大與さんのろうそくを選んでよかった」と安心感を覚えました。
今、滋賀県で和ろうそくをつくっているのは、大與さん一軒だけです。
大量生産できる安価なろうそくが流通するなか、なぜ、手作りの和ろうそくを守り続けているのかとお聞きすると、
「和ろうそくの灯りはとても幻想的で、独特の揺らめきがあります。
それを生み出すには、手でつくるしかないんです。
ハゼのロウなど高価な原料を使っているので、(商品によっては)不採算な面もありますが、続ける意味はあると思っています」
と大西社長はおっしゃっていました。
消えることのない、あたたかみの記憶
数日後。
ゆにわマートにて、留守を守ってくれたメンバーに、現地で学んだことを報告しました。
店頭スタッフの北川さんを中心に、大きなテーブルを、みんなで囲むように話をしていたら、自然と「和ろうそくの灯りを見てみたいね」という流れになりました。
テーブルの真ん中に小さな金色の燭台を置き、ろうそくの火を灯すと・・
「電気も消そう」
部屋が暗くなって、一瞬、静まり返る空間。
みんなの真ん中で、小さな、でも厳かな光が揺らめいて、天に向かって伸びてゆきます。
すると、空気が変わったんです。
なんともいえない、ゆるやかな、心がふわ〜っと開いてゆくような感覚・・・
みんなの表情がやさしくやわらいで、幻想的な灯りに照らされていました。
「こんなきれいな炎を見るのは初めて」
感嘆の声も上がるなか、北川さんが、こんな話をしてくれました。
「ろうそくの炎を、ただボーッと見つめているだけで、頭でゴチャゴチャ考えていたことがスーッと消えて、思考がクリアになります。
頭の中が余計な思考で一杯になっていると、ひらめきとか、アイデアって降りてこないものです。
思考を浄化して、自分を〝空っぽ〟にすることで、それこそ、インスピレーションが降りてくるスペースができるんですよ。
だから、こういう時間って、すごく大事です」
すると、「そうなんですよね。日頃はつい、いろいろ考えちゃったり・・」などと、心の内を打ち明けるメンバーが出てきたり。
言葉に出さないとしても、なんかこう、みんなで火を囲んでいたら心が素直になって、打ち解けてゆく感じがしたのです。
ろうそくの炎が消えるまで、1時間ほどの出来事でした。
大與さん訪問から数日がたち、日常に戻ったとき、和ろうそくの魅力にあらためて気づかされた、というわけなんです。
この記事を読んでくださったあなたも、ぜひ、
ご家族やパートナー、ご友人、職場の同僚など、大切にしたい人たちと、和ろうそくの灯りを囲んでみてください。
ろうそくの灯りが消えたとき、そこには、消えることのない〝あたたかみ〟が残っていることでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。